精神科医の兄の勧めで始めた訪問看護ステーション。
これから社会的な必要性がますます高くなるからと、
精神科訪問を主力としてスタートしました。
しかし現実は当然ですが厳しく、
精神科訪問を終えて帰ってきたスタッフに
訪問の様子を尋ねると、
「まったく私の話しを理解してもらえなかった」
「不安や心配な言葉の繰り返しでストレスになる」
などの否定的な話ばかりでした。
こんな状態が2年ほど続き、
結果訪問件数は増えるわけもなく
それは当然で、
いやいや訪問するのと、
やりがいをもって訪問するのでは雲泥の差です。
さすがにこんな状態ではいけないので、
スタッフ全員で、どうせ訪問するなら
「明るく楽しく」訪問できないかと考え、
試行錯誤を繰り返しました。
そしてやっと、
明るく楽しく訪問するための行動の目安。
5つの行動目標を作りました。
それではこれから5つの行動目標を紹介します。
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1.治すのではなく理解する
病院は病気を治療、「治す」ところです。
医師や看護師は入院であり通院であり、
悪いところを取り除く、
又は、
回復させるために全力を尽くします。
それでは訪問看護ステーションは
どういう立場でしょうか?
私の訪問看護ステーションの考えは、
特に精神科の訪問看護では、
支援付きで「治っている」と考えます。
つまり「治す」という考え方はしません。
支援付きというのは、
・毎日薬の飲み忘れが無いように支援する
ことで治っている。
・家族支援をすることで治っている。
・規則正しい生活を支援することで治っている。
・不安や心配ごとの相談支援をすることで治っている。
などです。
だから利用者さんやご家族の言葉に耳を傾け、
どうして欲しいのか、
どうなりたいのか
を詳しく聞くことで理解を深めます。
2.ちいさな変化を見逃さない
変化には2つあります。
一つは悪い変化です。
医療の基本は患者さんをしっかり観察して、
具合が悪いところはないかを
見逃さないように努めます。
命を預かっているわけですから、当然です。
私の訪問看護ステーションも考えは同じです。
もう一つの変化は良い変化です。
例えば、
精神科の訪問に行ったとき、
前回の訪問と比べて良くなったところを探します。
例えば前回より
・あいさつの声が大きくなった。
・表情がおだやかだった。
・窓のカーテンが前回閉めたままだっのが、
今日は開いていた。
などです。
本当にちょっとした変化です。
そして良かったところを高く評価し、
習慣化できるようにします。
この作業を繰り返すことで、
利用者さんの少しずつの変化が期待できます。
3.担当制より全員制
精神科の訪問看護はストレスがたまりやすい。
これは事実です。
しかし、
利用者さんに固定の担当スタッフを
つけるのではなく、
訪問スタッフ全員が交替で訪問することで、
何か問題があったとき、
他人ごとではなく、
全員で話し合いをします。
さらに、
ほぼ2人体制で訪問するので
お互い補うことができます。
このようにすることで、
ストレスは小さくできます。
訪問スタッフが
ちょこちょこ替わるのは、
利用者さんから嫌がられるのではないか?
そう思えるかもしれませんが、
その心配は特にないようです。
私のステーションでは、
ほとんど嫌がられたことはありません。
かえって、
利用者さんのことを理解できる人が
多ければ多いほど安心いただけます。
4.全員で考える
訪問スタッフ全員で利用者さんの
問題や課題を考えるのはあたりまえですが、
ここでの全員とは、
利用者ご本人、ご家族、
そして支援にあたる
関係機関の人達すべてのことです。
例えば、
病院の医師やソーシャルワーカーさん、
保健師さん、保険福祉士さんなどです。
それぞれの得意な分野を生かせれば
課題解決は早くなります。
5.自分を受け入れ、相手を信頼する
医療従事者である以上、
利用者さんに良くなってもらいたいと
願う気持ちは自然です。
しかし何回訪問しても、
自己否定の言動や行動の繰り返しでは
ついついダメだししたくなります。
しかし、
どんなに理解できない言動や行動であっても、
利用者さんにとっては
それが現状ベストかもしれません。
例えば訪問に行くと、
毎回窓のカーテンが閉めたままの利用者さんがいて、
健康によくないからと無理にカーテンを
開けたとしても、次回訪問したとき、
また閉まっていたりします。
カーテンを閉めたままにすることが、
どんなに不自然でもそこには理由があります。
私達はまずここを理解し、
受け入れたいと思っています。
しかし医療従事者として、
利用者さんが良い方向へ変化することは
けして最後まで諦めたくはありません。
どんな状況でも人は変わるものだと
そこは信頼し続けたいと思っています。
こんな5つの行動目標を立てた結果、
訪問スタッフから、
訪問が「明るく楽しくなりました。」
と言葉が聞けるようになり、
業績も改善してゆきました。
そして何か上手くいかなかくなったら
5つの行動目標とずれがないか、
チェックするようにしています。
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